年末年始や大型連休、観光シーズンなど、繁忙期になると職場全体が慌ただしくなり、休憩を取る暇もないほど働く人が増えます。特にリゾート地やサービス業では、長時間労働が「当たり前」になりがちです。しかし、本来こうした働き方は労働基準法(労基法)で制限されています。では、なぜ法律で定められた基準と現実の働き方の間にギャップが生じているのでしょうか。ここでは、繁忙期の過重労働の背景と、働く人が自分を守るために知っておくべきポイントを解説します。
1. 労働基準法が定める「残業の上限」
労基法では、1日8時間・週40時間を超える労働は「時間外労働」とされ、原則として禁止されています。ただし、36(サブロク)協定を結ぶことで、一定の条件下で残業が可能になります。
- 原則:月45時間・年360時間以内
- 特別条項付き36協定:年720時間以内、月100時間未満、複数月平均80時間以内
つまり、繁忙期であっても「無制限な残業」は違法です。特別条項があっても、労働時間と休日のバランスが崩れれば健康障害のリスクが高まります。
2. 現場で起こりがちな“グレーな実態”
実際の職場では、法定上限を超える労働が黙認されているケースもあります。特に宿泊業や飲食、物流など繁忙期が明確な業種では、次のような実態が見られます。
- タイムカードを切った後の「サービス残業」
- 人手不足によるシフト連勤
- 休日出勤を“自主的”とみなすケース
こうした環境では、従業員が「仕方ない」と我慢して働き続けてしまうことが多く、結果として慢性的な疲労やメンタル不調を引き起こします。
3. 労基法の「限界」と運用のギャップ
法律そのものは整備されているものの、監督体制の不十分さや業界構造の問題で、現場まで行き届かないのが現状です。特に派遣・短期契約の場合、労働者が立場上「声を上げにくい」状況もギャップを広げる要因になっています。
また、企業側も「人手不足を補うために一時的に仕方がない」と判断してしまうことが多く、根本的な改善につながりにくいのが実情です。
4. 自分を守るためにできる3つの行動
繁忙期に働く際は、以下のポイントを意識して自分の健康を守ることが大切です。
- ① 労働時間を記録する: スマホのメモやアプリでもOK。証拠を残しておく。
- ② 無理なシフトは相談する: 上司や派遣元に正直に伝える勇気を持つ。
- ③ 体調に異変を感じたら休む: 倒れてからでは遅い。医師の診断書をもらえば休業も正当化されます。
「忙しいから言えない」と我慢することは、自分を追い詰める結果になりかねません。体調の不調を感じたら、できるだけ早く相談・報告を。
5. 労働相談ができる公的機関
過重労働が疑われる場合や、職場に相談しにくいときは、外部の相談機関を活用しましょう。
- 労働基準監督署: 各地域の労働基準監督署で、労働時間や残業代に関する相談が可能。
- 総合労働相談コーナー: 厚生労働省が設置する無料の相談窓口。
- みんなの人権110番: パワハラやメンタル不調も含めて相談できます。
匿名でも相談できるため、「証拠がない」「立場が弱い」と感じる人でも安心して利用できます。
まとめ:繁忙期こそ「自分の限界を知ること」が大切
労働基準法は、働く人を守るための最低限のルールです。しかし、現実には法と実態の間に大きな差が存在します。繁忙期こそ、「会社のため」よりも「自分の健康のため」に行動する意識が必要です。長時間労働を当然とせず、休息・相談・記録の3つを習慣にして、自分の働き方を守りましょう。
